住宅をバリアフリー化する必要性は?
世の中では、徐々にバリアフリーの意識が浸透し始め、整備も進められるようになってきました。ですが、本当にバリアフリーが必要なのは外よりも中、一日のうち長い時間を過ごす家なのではないでしょうか。
特に、昨今大きな問題としてたびたび取り上げられる少子高齢化によって、親の介護のために離職せざるを得なくなるケースがあります。そうして、離職を余儀なくされるのも多くが女性、それも55~59歳が多いというデータが、厚生労働省の「平成23年雇用動向調査の概況:結果の概要」で示されているのです。
50代も半ばになれば、年齢による身体の衰えで自由がきかなくなってくる箇所も出てきます。そのような場合、バリアフリーが意識された住宅かどうかで、介護のしやすさは格段に変わってくるでしょう。
バリアフリーを意識した住宅を建てるには?
それでは、具体的にどのような部分をバリアフリー化するのが良いのでしょうか。今回は、介護のしやすさの面からおすすめの場所と、方法を紹介していきます。
まずは、なんといっても床です。高齢者のけがの原因は、ほとんどが自宅での転倒といわれていますから、床の段差を極力少なくすることで、移動のしやすさや安全性が改善されます。
また、介護が必要な方の部屋の近くに、トイレやお風呂などがあれば、介護は楽になりますが、構造上うまくいかないこともあります。それでも、床のバリアフリー化ができていれば移動にかかる苦労はかなり軽減されます。
ほかにも、バスリフトやトイレリフトの導入、スロープの設置など、要所要所にあると介護の助けになるものがあります。しかし、それらを導入して介護の助けになる住宅作りをしようとしても、設置するだけのスペースがなければどうにもなりません。
そのため、自宅で介護を行う可能性があって、将来のバリアフリー化を考えるのであれば、購入時にそれらのスペースを確保しておくことをおすすめします。
介護におすすめな間取り
広い間口:車いすでも通れる掃き出しの窓
突然の病気などで介護が必要になると、家に引きこもりがちになります。家族が連れ出してあげたいと思っても、重い体重を支え、段差を乗り越えて外に出るだけでも一苦労です。介護される側も、気を使って外に出たいと言いにくくなってしまうことも考えられます。
そこで、外に通じ、フラットで広い間口があれば、外に出る心理的な負担が和らぎます。外に出れば、多少は運動もすることになりますし、脳の刺激にもなります。健康寿命を考えても広い間口は重要なポイントです。
ただ、玄関をフラットに広くとなると、大幅な改築が必要になったり、そもそも広さを取れないという事情もでてきますよね。そこで、一階の一部の部屋の壁を取り払って、そこを掃出しの窓にし、スロープを付けて外に通じるようにするという間取りに変更するのがおすすめです。光も取り入れられて快適になりますよ。
広めのトイレ・引き戸
介護において、トイレの介助は一日に何度もありますし、かなり大変な重労働です。トイレは、できるだけ介護される人の近くに、そして広めにとってあるといいでしょう。また、引き戸にしておくことも重要です。介護するときは、扉の開閉が邪魔でなかなか通れなかったり、車いすの場合には、ドアが閉められなくなったりしてしまいます。
どの程度の介護が必要かどうかにもよりますが、自力でトイレができる場合と、そうでない場合で、手すりや肘おきの有無など、検討することができると思います。
将来のバリアフリーに向けて空間にゆとりを持った住宅作りを
30代で住宅を購入したとしたら、ローンを払い終える頃が、上でも書いたようにちょうど介護が理由で退職する時期です。ローンが終わったことで、住宅のリフォームやリノベーションとともにバリアフリー化も考えるケースもあれば、二世帯住宅に建て直すこともあります。
バリアフリー住宅は、最初から全て整えておかなくても、こうした節目に一緒に改築を行うという選択肢があります。
介護が必要になったとしても、どんな介護が求められているのか、必要な機能や設備が何なのかは、介護される方の症状だけでなく、介護する側の事情によっても変化します。最初から型にはめて考えるのではなく、柔軟に対応していけるように余裕を持った空間作りを意識しておくようにしましょう。